火をいじって消す癖は、口座でも直らなかった — 趣味が三つとも同じところを突いてくる
机を離れているときは、キャンプかスポーツ観戦か、ゲームをしています。このサイトの最後にそう書いたあとで、三つとも結果が読めないから似ている、という自分の説明が雑だったことに気づきました。似ているのは結果のほうではありません。読めない結果を前にしたときの、私の手の動かし方のほうです。三つとも、そこを別の角度から突いてきます。
火がつきかけると、私は必ず薪を組み直して消す
出発前、二つの予報が食い違っていました。降水確率の低いほうと高いほうがあって、私は低いほうの画面を開いたままにして、高いほうを閉じました。行きたいという気持ちが先にあって、根拠は後から選んでいます。現地でも同じことをしました。焚き火の煙が白から透明に変わって、小枝に火が移りかけたあたりで、私は必ず薪に手を伸ばす。空気の通り道を作ってやろうとして、できかけていた火の芯を崩す。その日は三度やりました。見かねた同行者に、三十分だけ触らないでいてくれと言われて、両手を膝に置いて座っていたら、火は勝手に太くなりました。恥ずかしかったのは消したことではなく、消えた直後に、風向きが悪いと口に出した自分のほうです。自分の手が原因だと分かっていながら、理由を外側に置きにいっている。火が安定するまでの時間、私は待っていたのではなく、待てなかっただけでした。
一試合で監督を評価する人を素人扱いしながら、一度の売買で自分を裁いていた
贔屓のチームがリードしている試合の終盤になると、私は席を立ちます。自分が見ていると追いつかれる気がするからです。理屈が通らないのは分かっていて、それでも部屋を出る。この癖の正体は縁起担ぎというより、たぶん逆で、自分が結果に一切関係していないという事実のほうに耐えられないのだと思います。もうひとつ、耐えられていないものがあります。予想をキックオフ前に一行だけ書き残すようにしてから分かったのですが、書き残す前の私は、自分がもっと当てていたと思っていました。当たった予想だけを覚えていて、外れたほうは翌日には消えている。そのくせ私は、一試合の結果だけで監督の是非を語る人を素人扱いしてきました。それでいて自分の売買では、一回の結果で判断の良し悪しを決めていた。利益が出たほうは正しくて、損したほうは間違いだった、と。判断の質は、回数を重ねないと形が見えてきません。
三連敗したあとの一戦が、その日いちばん下手になる
対戦型のゲームで負けたとき、私は結果画面をほとんど読まずに、もう一回を押します。負けが込んでいるときほど間隔が短くなる。頭の中では、次で勝てばさっきの負けは無かったことになる、という計算が動いています。実際には、三連敗のあとの一戦が、その日いちばん判断が粗い。あとで落ち着いて振り返れば、負けた理由は毎回ちゃんと画面に出ていました。読まずに次へ行っているのは、原因を知りたくないからではなく、原因を読む数十秒が、取り返しの邪魔になるからです。急いでいる自分が、いちばん下手な自分でした。三つとも、待っている時間を何もしていない時間として数える癖の、出口が違うだけです。
約定の履歴を並べたら、銘柄ではなく在席時間が並んでいた
同じ癖は、当然のように自分の口座にも出ていました。取引の記録を時刻順に並べたとき、判断の中身より先に目についたのは、画面を開いていた時間が長い日ほど売買の回数が多いという、身も蓋もない対応です。相場が動いたから触ったのではなく、私がそこに座っていたから触っている。勝った取引についても、事前に書いた根拠と実際に効いた要因が一致していたかだけを並べ直したら、一致していない勝ちが、思っていたより多くありました。いちばん見たくなかったのは、損切りをした直後の行です。別の銘柄で建て直している。取り返す以外の理由がないのに、チャートを開いて、それらしい根拠を後から探しに行っている。ゲームなら翌朝には馬鹿らしいと分かりますが、口座のほうは戦略の修正という言葉が使えてしまう。たちが悪いのは、そこです。趣味のほうで笑い話にしていたものは、金額のつく場所では笑い話になりません。
AIを入れた理由は効率ではなく、手を離せる時間を作るためだった
収集や整理をAIの側に移したとき、自分では作業を速くするためだと説明していました。いま振り返ると、動機はもう少し情けないところにあります。私が画面を見ていると、私は触るからです。連敗したらやめる、という類のルールは何度も作りました。守れたことがありません。熱くなっているときにそれを判断するのは、熱くなっている本人だからです。だから、止める役ではなく気づく役のほうを外に出しました。直近の操作の間隔と、最初の計画になかった注文が何回続いたかを集計して、画面に並べさせています。渡しているのは観測であって、やめるかどうかの判断ではありません。それでも、計画外の操作が続いていますと表示が出るだけで、指の速度は落ちます。同じ理由で、使っていない指標を毎月数える係も置いてあります。自分を信用していないから、外から数えてもらっている。焚き火のときに手を膝に置いていた三十分を、口座の側にも作ったというだけの話です。趣味は三つとも続けていますし、火は相変わらずいじります。
本稿は特定の銘柄・取引・運用手法を推奨するものではなく、投資助言を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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