朝の光が入る机の上のノートと万年筆

佐藤 優

AI投資システム設計者
SATO YU

AIに投資を任せるのではなく、
AIを、判断の質を上げる相棒にする。

投資歴14年。市場データの収集からニュース分析、銘柄リサーチ、シグナル検証、資産監視までを自動化した独自のAI投資リサーチシステムを実運用しながら、投資・リサーチ・コンテンツ制作を担う10以上の専門AIチームを設計・運営しています。

朝の光が入るまで、何も決めない。

佐藤優
読むのは、決める前の時間にまとめている。

経歴

慶應義塾大学
経済学部 卒業

外資系専門商社に入社。海外取引・新規事業開発、為替リスク管理に従事。

独立後
Amazon中心のD2Cブランドを起業

商品企画から広告運用、販売分析、在庫管理まで、事業全体を単独で構築・運営。

現在
投資 × AIシステム開発を専業に

株式・暗号資産市場で培った14年の経験をもとに、自ら開発したAI投資リサーチシステムを実運用。

佐藤優
当てにいく仕事から、外れても壊れない形を作る仕事へ。
朝の光が差す書棚
読み終えた本の背が、その年の関心を覚えている。
14
市場と向き合った時間

誇れるのは、勝った回数ではありません。何度も判断を外しながら、株式・暗号資産の市場から退場しなかったことです。投資・リサーチ・コンテンツ制作・資料作成・分析・プロジェクト管理を分担する10以上の専門AIチームは、その過程で「一人で決めない」ために作られました。

運用成績・利回り・倍率等の数値は、金融商品取引法・景品表示法上のリスクを踏まえ本サイトでは掲載していません。

一人で決められる机ほど、危ないと思っている

商社にいた頃、為替の判断は私一人のものではありませんでした。誰かが前提を疑い、誰かが金額の上限を決め、私はその枠の中で手を動かしていた。当時は窮屈だと思っていましたし、正直に言えば、止める側の人間を内心では慎重すぎると見ていました。外した日にそれが逆になります。外したのは私の読みなのか、そもそもの前提のほうなのかを、他人と一緒に切り分けられた。あれは私を縛る枠ではなく、私を守る枠でした。

独立してAmazonでブランドを始めてからは、その枠がなくなりました。何を仕入れるかも、いくら広告に出すかも、いつやめるかも、全部自分の机の上で完結します。速いのは確かですが、止める人がいません。売れ行きの落ちた商品を、もう少しだけ広告を回せば動くはずだと思って延ばしたことが何度もあります。売れなかった在庫は倉庫に残り、あれは自分の判断だったという事実だけが、毎月の保管料と一緒に届き続けました。

投資のほうでも、うまくいかない時期がありました。こたえたのは減った金額そのものではありません。人に何があったのかと聞かれて、相場が悪かった以上のことを答えられなかったことです。自分がどう考えて決めたのかの記録が、手元に何も残っていない。負けたことよりも、次に何を直せばいいのか分からない状態のほうが、長く尾を引きました。

10以上のAIチームに分けたのは、能力を足したかったからではありません。商社の机にあった分業を、一人の机の上に組み直したかったからです。反対の材料を探す係をわざわざ別に立てているのも、かつて私に反対してくれた人がもういないからで、賢い相棒が欲しかったわけではない。一人で抱えないための、手持ちの道具でできる代用品です。

机を離れているときに選ぶものも、結局は似ています。キャンプは天気次第で予定が崩れ、観戦している試合の結果は私が何をしても変わらず、ゲームは負ける前提で始める。思い通りにならないものにわざわざ時間を使っているわけですが、そこで身につくのは我慢ではありません。崩れた後にどうするかの段取りと、崩れかけているものに手を出したくなる自分の癖のほうです。

派手に増えた年より、途中でやめずに済んだ年のほうをよく覚えています。ここまでの仕組みは、その「やめずに済む状態」を保つために組んだもので、それ以上の意味はありません。

佐藤優
思い通りにならないものに、わざわざ時間を使っている。

設計思想

AIに任せる範囲は、
広げるより削るほうが難しい。

万能な一台より、役割を絞った10台を選びました。10年以上、自分の資金で相場に向き合ってきて、判断そのものを機械に渡そうとした時期もあります。うまくいかなかったのは精度の問題ではなく、間違えたときにどこが原因だったのかを自分で説明できなくなることでした。

いまは、調べる・並べる・疑うといった作業を工程ごとに分けてAIに渡し、最後に決める部分だけを手元に残しています。以下は、その線をどこに引くかについて、実際に使っている基準です。

役割で分ける
一台に何でもやらせると、間違えた場所が見えなくなる。

市場のデータを集める係、それを整理して仮説を書く係、書いたものを疑う係、資料に落とす係、というふうに工程で分けています。分ける理由は性能ではなく、原因を特定するため。おかしな結論が出たとき、集めた材料が悪かったのか、読み方が悪かったのかを、そこで初めて切り分けられます。

一次データに戻す
数字は、AIが書いた文章ではなく取得元まで戻して確かめる。

AIは、それらしい数字を自然な文章の中に置いてしまいます。だから価格も決算の数値も、出力をそのまま使わず、取得元のデータに当たり直してから資料に入れています。手間はかかりますが、ここを省いた資料は後で全部作り直しになる。取れなかった数字は空欄のままにし、推測で埋めません。

任せない線
何を見るかは渡せても、どれだけ賭けるかは渡さない。

調べる・整理する・比較するという工程はAIに渡しています。一方で、資金のどれだけを一つの判断に割くか、どこで降りるか、そもそも今回は参加しないという選択は渡していません。取り返しがつかないのは金額の側であって、情報の側ではないからです。ここを渡した瞬間、AIは相棒ではなく代理人になります。

疑う係を置く
賛成しかしないAIは、考える速度は上げるが精度は上げない。

同じ材料を渡して、あえて反対の結論を書かせる係を別に立てています。強気の材料が並んだときに、それを崩す材料のほうを探させる役です。人が一人で考えると、どうしても都合のいい材料ばかり集めてしまう。反対側を先に機械に作らせておくと、自分がどこを見ていなかったのかが、決める前に出てきます。

型を先に作る
毎回ゼロから頼むのをやめた時点で、出力のばらつきが減った。

同じ作業を頼むのに毎回違う言い方をしていると、返ってくるものも毎回変わります。だから工程ごとに、何を入力し、どの形式で返させるかを先に固めてから走らせています。作るのは中身ではなく、中身が通る型のほう。型が決まっていれば、うまくいかなかったときに直すのは指示であって、AIそのものではありません。

壊れる前提
モデルが変われば、昨日まで通っていた指示が通らなくなる。

AIは黙って挙動が変わります。だから出力が想定どおりかを確かめる小さな検査を工程ごとに置き、通らなければそこで止めるようにしています。止まってくれれば直せますが、それらしい間違いのまま流れると気づけない。長く動かすものほど、うまく動かす工夫より、壊れたと分かる工夫のほうを先に入れています。

ここに書いたのは相場の必勝法ではなく、判断を自分の手元に残したまま、扱える情報量だけを増やすための設計です。道具は変わり続けるので、この基準も使いながら書き換えていきます。

講座で扱っていること

お伝えするのは、AIツールの使い方ではありません。AIは日々進化しますが、設計の考え方さえ身につければ、新しいAIが登場するたびに、自分でその仕組みを作り続けることができます。

佐藤優
火の番と同じで、放っておくと消えるか、燃えすぎる。
AIチームの組み方

一台に全部やらせず、収集・整理・反証・作成に工程を分ける具体的な分け方を、実際に使っている指示の形ごと見せます。何をどの順番で渡すか、返ってきたものをどこで受け取り、どこで止めるかまでを扱います。

出力の検証手順

AIが書いた数字をそのまま信じず、取得元のデータへ戻して確かめる手順を扱います。どういう場面で間違いが混ざりやすいのか、どういう聞き方をすると間違いが表に出やすいのかを、自分の失敗例から具体的に。

任せない範囲の決め方

どの工程を渡し、どこから自分で持つか。取り返しのつく作業と、取り返しのつかない判断を分ける線を、私自身がどう引いているかとして話します。個別の銘柄や売買タイミングの推奨は扱いません。

壊れたときの直し方

思った出力が返らないとき、指示が悪いのか、渡した材料が悪いのか、工程の分け方そのものが悪いのかを切り分ける順番を扱います。ここが分かると、新しい道具を買い足さずに、手元の構成のまま直せるようになります。

到達点

受講後に、自分の作業のうちどれをAIに渡し、どれを手元に残すのかを、自分の言葉で説明できる状態を目指します。投資判断を代行するものではなく、成果を保証するものでもありません。

講座の詳細を見る
朝の机
机の上は、たいてい途中のままになっている。

コラム

講座では手順を、動画では画面を出しています。どちらも尺に収める過程で、まず削られるのは判断の理由のほうです。ここには、その削った部分だけを置いています。読む順番はありません。いま引っかかっている題から読んでください。

2026.07.19 / 判断の設計

火をいじって消す癖は、口座でも直らなかった — 趣味が三つとも同じところを突いてくる

机を離れているときは、キャンプかスポーツ観戦か、ゲームをしています。このサイトの最後にそう書いたあとで、三つとも結果が読めないから似ている、という自分の説明が雑だったことに気づきました。似てい…

2026.07.12 / 損失と撤退

相場観より先に、いくら痛むかを決める — 商社の為替担当がやっていたこと

商社で為替のリスクを見ていた頃、私に求められていたのは相場を当てることではありませんでした。外れた時に会社がいくら失うのかを、動く前に確定させることでした。

近日 / 判断の設計

AIに判断を渡すと、負けた理由が説明できなくなる

10以上のAIチームを動かしていますが、最後にボタンを押す判断だけは渡していません。任せた瞬間、外した時に何を直せばいいのかが分からなくなるからです。

近日 / 商いの現場から

塩漬けは保有ではない — Amazonの在庫が教えてくれたこと

売れない在庫は、倉庫代を払いながら現金を止め続けます。含み損を抱えた銘柄も構造は同じで、持っているのではなく資金の置き場所を占領されています。

近日 / AIチームの運用

万能なAIを一つ作るのをやめて、10以上に分けた

最初は一つのAIに全部やらせていました。分けた理由は性能ではありません。出力が間違っていた時に、どの工程で狂ったのかを特定できるようにするためです。

北窓のある部屋に立つ佐藤優
何も置いていない時間のほうが、長い。

執筆

ゲラと朱の鉛筆

まだ本になっていない紙の束を、10月に。

2026年10月 刊行予定・仮題

決めるのは、人間である

投資リサーチを分業する、10のAIチームの設計

講座や動画では尺の都合で削ってきた、判断を組み立てる側の話をまとめています。書名・刊行時期とも現時点では予定で、確定しだいこの場で告知します。いま、いちばん時間を使っている仕事です。

原稿を読んでくださる方を探しています

刊行前の原稿を通しで読み、遠慮なく指摘をくれる方を探しています。投資歴は問いません。読んでいて引っかかった箇所に印をつけて返してもらえれば、それで十分です。ご連絡はXのダイレクトメッセージから。

朝の散歩
考えがまとまるのは、たいてい机の前ではない。

考えていることを、置いている場所

講座では手順を、動画では画面を、Xではその日に考えたことを出しています。長くなった話はコラムに置いています。立場はどれも同じで、違うのは粒度だけです。いま知りたい粒度のものから読んでください。

X その日の相場について考えたことを、短く YouTube 画面を映しながら、手順を最初から 講座 設計の考え方を、通しで コラム 長くなった話は、こちらに全文
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2026.07.19 / 判断の設計

火をいじって消す癖は、口座でも直らなかった — 趣味が三つとも同じところを突いてくる

机を離れているときは、キャンプかスポーツ観戦か、ゲームをしています。このサイトの最後にそう書いたあとで、三つとも結果が読めないから似ている、という自分の説明が雑だったことに気づきました。似ているのは結果のほうではありません。読めない結果を前にしたときの、私の手の動かし方のほうです。三つとも、そこを別の角度から突いてきます。

火がつきかけると、私は必ず薪を組み直して消す

出発前、二つの予報が食い違っていました。降水確率の低いほうと高いほうがあって、私は低いほうの画面を開いたままにして、高いほうを閉じました。行きたいという気持ちが先にあって、根拠は後から選んでいます。現地でも同じことをしました。焚き火の煙が白から透明に変わって、小枝に火が移りかけたあたりで、私は必ず薪に手を伸ばす。空気の通り道を作ってやろうとして、できかけていた火の芯を崩す。その日は三度やりました。見かねた同行者に、三十分だけ触らないでいてくれと言われて、両手を膝に置いて座っていたら、火は勝手に太くなりました。恥ずかしかったのは消したことではなく、消えた直後に、風向きが悪いと口に出した自分のほうです。自分の手が原因だと分かっていながら、理由を外側に置きにいっている。火が安定するまでの時間、私は待っていたのではなく、待てなかっただけでした。

一試合で監督を評価する人を素人扱いしながら、一度の売買で自分を裁いていた

贔屓のチームがリードしている試合の終盤になると、私は席を立ちます。自分が見ていると追いつかれる気がするからです。理屈が通らないのは分かっていて、それでも部屋を出る。この癖の正体は縁起担ぎというより、たぶん逆で、自分が結果に一切関係していないという事実のほうに耐えられないのだと思います。もうひとつ、耐えられていないものがあります。予想をキックオフ前に一行だけ書き残すようにしてから分かったのですが、書き残す前の私は、自分がもっと当てていたと思っていました。当たった予想だけを覚えていて、外れたほうは翌日には消えている。そのくせ私は、一試合の結果だけで監督の是非を語る人を素人扱いしてきました。それでいて自分の売買では、一回の結果で判断の良し悪しを決めていた。利益が出たほうは正しくて、損したほうは間違いだった、と。判断の質は、回数を重ねないと形が見えてきません。

三連敗したあとの一戦が、その日いちばん下手になる

対戦型のゲームで負けたとき、私は結果画面をほとんど読まずに、もう一回を押します。負けが込んでいるときほど間隔が短くなる。頭の中では、次で勝てばさっきの負けは無かったことになる、という計算が動いています。実際には、三連敗のあとの一戦が、その日いちばん判断が粗い。あとで落ち着いて振り返れば、負けた理由は毎回ちゃんと画面に出ていました。読まずに次へ行っているのは、原因を知りたくないからではなく、原因を読む数十秒が、取り返しの邪魔になるからです。急いでいる自分が、いちばん下手な自分でした。三つとも、待っている時間を何もしていない時間として数える癖の、出口が違うだけです。

約定の履歴を並べたら、銘柄ではなく在席時間が並んでいた

同じ癖は、当然のように自分の口座にも出ていました。取引の記録を時刻順に並べたとき、判断の中身より先に目についたのは、画面を開いていた時間が長い日ほど売買の回数が多いという、身も蓋もない対応です。相場が動いたから触ったのではなく、私がそこに座っていたから触っている。勝った取引についても、事前に書いた根拠と実際に効いた要因が一致していたかだけを並べ直したら、一致していない勝ちが、思っていたより多くありました。いちばん見たくなかったのは、損切りをした直後の行です。別の銘柄で建て直している。取り返す以外の理由がないのに、チャートを開いて、それらしい根拠を後から探しに行っている。ゲームなら翌朝には馬鹿らしいと分かりますが、口座のほうは戦略の修正という言葉が使えてしまう。たちが悪いのは、そこです。趣味のほうで笑い話にしていたものは、金額のつく場所では笑い話になりません。

AIを入れた理由は効率ではなく、手を離せる時間を作るためだった

収集や整理をAIの側に移したとき、自分では作業を速くするためだと説明していました。いま振り返ると、動機はもう少し情けないところにあります。私が画面を見ていると、私は触るからです。連敗したらやめる、という類のルールは何度も作りました。守れたことがありません。熱くなっているときにそれを判断するのは、熱くなっている本人だからです。だから、止める役ではなく気づく役のほうを外に出しました。直近の操作の間隔と、最初の計画になかった注文が何回続いたかを集計して、画面に並べさせています。渡しているのは観測であって、やめるかどうかの判断ではありません。それでも、計画外の操作が続いていますと表示が出るだけで、指の速度は落ちます。同じ理由で、使っていない指標を毎月数える係も置いてあります。自分を信用していないから、外から数えてもらっている。焚き火のときに手を膝に置いていた三十分を、口座の側にも作ったというだけの話です。趣味は三つとも続けていますし、火は相変わらずいじります。

本稿は特定の銘柄・取引・運用手法を推奨するものではなく、投資助言を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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2026.07.12 / 損失と撤退

相場観より先に、いくら痛むかを決める — 商社の為替担当がやっていたこと

商社で為替のリスクを見ていた頃、私に求められていたのは相場を当てることではありませんでした。外れた時に会社がいくら失うのかを、動く前に確定させることでした。個人の口座に移っても、この順番だけは変えていません。

円高を当てることは、最初から私の仕事ではなかった

外資系の商社で海外取引にぶら下がる為替のリスクを見ていた頃、担当になって最初に驚いたのは、社内の誰も相場の予想を私に聞いてこなかったことです。求められたのは、来期のドル円がどこへ行くかではなく、想定から外れた時に決算がいくら傷むのかという一点でした。予想は当たり外れのある意見ですが、傷む金額は動く前に計算できる事実です。会議で通るのはいつも後者でした。相場観を語っても誰も評価しない場所で数年を過ごしたことが、その後の自分の口座の使い方をほとんど決めてしまったように思います。

先に確定していたのは、読みではなく耐えられる金額だった

実務の順番はいつも同じでした。まず、この取引でどこまで振れたら事業計画が成り立たなくなるのかという線を決める。次に、その線を越えないように手当てをする。相場の見通しを立てるのは、手当てをどの程度の厚さにするかを調整する最後の工程です。読みは一番最後に出てきますし、読みが外れても最初に引いた線の内側で事が収まるように組んであります。当てにいくのではなく、外れても壊れない形を先に作る。派手さのない仕事ですが、担当者の仕事の中身はほとんどこれでした。

個人の口座に移った途端、この順番が引っくり返る

自分の資金で株や暗号資産を触りはじめて気づいたのは、順番が完全に逆になっていたことです。まず何が上がりそうかを考え、買い、下がってから、さてどこまで耐えるかを考える。損失の幅を最後に決めています。しかも最後に決める時には、含み損という感情がすでに判断に乗っているので、線はずるずると後ろへ動きます。会社では絶対に許されなかったことを、自分の口座では毎回やっていました。誰も止めないからです。為替の担当者に上司がついていたのは、担当者が無能だからではなく、痛みの量を自分ひとりで決めさせないためだったのだと、後になって分かりました。

痛む額を先に置くと、相場観は主役から道具に降りる

順番を元に戻してから最初に変わったのは、成績ではなく相場に対する態度でした。先に痛む額が決まっていると、予想は当てるためのものではなくなります。どの程度の確からしさなら、この痛みを引き受けてもいいのかを測る道具になる。当たった外れたで一喜一憂する対象ではなくなるので、外した時に自分を責める材料が減ります。減った分の時間を、何を直すかという話に使えるようになりました。相場観を軽んじているわけではありません。主役の座から降ろすと、かえって長く使える道具になる、という話です。

外れた日を、事故ではなく想定内の一日にしておく

14年やって手元に残っているのは、勝ち方の手法ではなくこの順番のほうでした。手法は環境が変われば効かなくなりますが、外れた時にどこまで痛むかを先に決めておく癖は、対象が株でも暗号資産でも同じように働きます。AIに分析を任せるようになってからも、ここだけは渡していません。いくらまでなら失っていいかは、その人の生活と性格が決める数字で、計算の外にあるからです。機械に出させれば、もっともらしい数字がすぐ返ってきます。返ってきた数字を疑えなくなるくらいなら、自分で決めて背負ったほうがいい。

本稿は特定の銘柄・取引・運用手法を推奨するものではなく、投資助言を目的とするものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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